「一筆の主張」 令和元年12月5日(木) 第30回障害者の主張大会 この「一筆の主張」は、「障害者の主張大会」に併せて、より取り組みやすい「詩」や「川柳」により、障害者の皆さんの日頃の思いを募集したもので、今年で4回目となりました。 詩には、15名から15篇、川柳には、62名から153句が寄せられました。 ぜひゆっくりご鑑賞いただき、より多くの方々と思いをつなぐ一助となりましたら幸いです。 【審査員からの講評】 〜選を終えて〜 大事な気付き   審査員 竹内冬眠 「だんだん能(よ)(良)く為(な)(鳴)る法華(ほっけ)の太鼓」という地口(ぢぐち)がある。叩き馴れてくると太鼓の音色が、序々によくなってくるという意味だが、何事も飽きずに、怠りなく継続すれば必ず良い結果が出ることを言っている。今回寄せられた作品は、まさにこの地口通りの嬉しい状況となっている。 【詩の部】 入選1位 「正しいものは」  河田妙子 >評<  僅か11行の作品は、今日的な実に重い課題を投げかけている。作者の確かな眼は、「確実なもの」の在り方をしっかり捉えている筈だ。 入選2位「時の願い」  風姫 >評<  孤独な日常を、「景色」や「夢」「時」に、さらりと託して、「手紙(結果)」を静かに待っている。 入選3位「無題」  小林浩太朗  >評<  重度の障害をまったく感じさせない強(したた)かな意志が、朝の静謐(せいひつ)を作っている。 佳作 1 「心のカギ」  羽田京子 >評<  自らを激励叱咤している。積もり積もった思いを、「心のカギ」で開けてみる。 佳作 2 「届け」  吉田沙緒里 >評<  かつて自身が「心を閉じて じっとがまん」していた、そこを超えた私だから、胸張って声がかけられる。 佳作 3 「強さ」  中澤ゆかり >評<  実はこの作品、終行から始まるテーマがある筈だ。 佳作 強さ 中澤 ゆかり 本当の強さは ケンカでも 権力でも 地位でも 軍事力でも 我慢でも 影響力でもない 許すことだ 二人のある道 前嶋 亜矢子 くーさんとあゆむ道は けわしくて  泣いてたら  はげまされる。 私をかわいがる くーさんと。 私のためにおこってる? 私は きょうも会えていい日。 水魚の交わり 穴水 公一 魚には水が必要の如く 動けない者には 介護する人が必要 なのに・・・ 決まりだけで 時間だけで 情愛抜きの 交わりで 明日の福祉はグレーかな 顔は微笑んで 腹の中では こん畜生 バカヤロー の まるで落語の掛け合いだ 佳作 心のカギ 羽田 京子 ひとりでいかないで 私をおいて行かないで あなたは私の大切な人 私をすてないで 私がもっと早く気づけば ひとりになることはなかった 私は私のことだけを考えていた でもね つらくてもがまんできる ひとりはみんなのために みんなはひとりのために 心の中を見て下さい いつでも話せますよ カギがたくさんあります いっぱい聞いて下さい 私はあなたのことを見守っているよ 遠い空からでも見える 人は団結している 夢に向かって進もう これからもがんばってゆこうよ 未来のために まずはみんなのために 発信・・・ 女神 =ディーヴァ= 啓斗 〜 僕の愛する(大切な)けやきハウスさんにささげます 〜 産なる血(乳)のみ子よ  聖なる炎を我と共にたたえよ!! 全ての弱者よ 今この刹那に 天に集え!! 誠の強者と為りとて 「今」真の悪を滅する時ぞ!! そして我らが 女神(ディーヴァ)よ  今 永遠(とわ)の甘美なる接吻を ※ディーヴァは歌姫の意味です。 秋が来た 宇佐美 新一 風が頬をなぜて通り過ぎていった あれっ と思った 何とも言えない 心地良い風だ 青く高く澄んだ空に 赤トンボが 群れ飛んでいる そして もうすぐ枯れ葉の乱舞があり 北国では 雪が舞うのを見るだろう 私は 何時まで その繰り返しを この目で 心で  感じる事が出来るだろうか・・・ 無題 中村 美津夫 だんだんと年令を重ねながら生きます 妻とともに 妻には感謝、感謝、感謝です 貴族生活が長かった 今私は一人でない 私の前を歩く美津子さん おーい中村君 しんどき時は体を休めてネ! おーい中村君 けったりい時はブレーキをかけながら 徐行運転するんだヨー! 年を考えて行動するんだよ おーい美津夫君 一人の体じゃネエダヨー そうそう私は二人で一人前 いつもありがとう美津子殿 ハロウィンから華やかる真紅の紅葉へ 渡辺 暁 カボチャ大王 ハロウィンの日 魔女の晩餐 とっておき 魔女の仮装がやってくる チョコレートケーキ ごちそう せいぞろい すずしげな風 最後の一葉 新緑の 真っ赤に咲いた 真紅の紅葉狩り ハロウィンから華やかな 真紅の紅葉へ おめでとう 入選 正しいものは 河田 妙子 間違いだらけのこの世の中に 正しいことを見つけるのは 暗闇を手探りで歩くようなもの もしかしたら人ぞれぞれ 正さは違うのかも知れない この複雑な世の中には 確実な正解はいくつもあって 無限に続く路を歩くようなもの 間違いだと思い込んでいるものが あんがい正しいのかもしれない 確実なものはどこにある・・・? 佳作 届け 吉田 沙緒里 心をとじてじっとがまんしている 子がいる 笑いたいのに笑えず苦しんでいる 子がいる 助けてって言いたいのに言えない 子がいる 手をさしのべてあげられたらきっと みんなもっとらくになるのに 助けてあげたい 一人一人あなたの事をもっともっと 愛してあげたい 届いてほしい 届けって思う ずっとずっと苦しんでいる人達へ 心にきずをかかえている人 そして 世界中のみんなへ あなたを愛してあげたい 青年 依田 隆重 街角に佇む異国の人 基督(キリスト)の御教えを 拡める異国の青年 青年は 小さなパンフレットを 僕に与えた 僕の入教を望んで 僕の入教を 青年は望んだ 僕がどんな者か知らずに 彼の心を手に 僕はその場を 立ち去った 神の光を知らずにいたけれど 皆の為 青年は その献身を捧げるのだと 素直に感じた 傷 乙黒 初音 人と人がふれあうとき 小さないたみを抱いて歩みよる時 過去も今も未来もひとつになり あらたな一歩が踏み出せそうなとき 傷のついた手を差し出して握手する 生きていることが苦しかったことも 人をとおざけてひとりの夜を いつ終わるともしれない長い闇の中で 冷たい壁に耳を押しあてていたとき そこで聞こえた小さなとおい風の中の 小さかったわたしの声 もう泣かなくていいよと 初めて自分に言ったとき わたしの中にひとすじの光がさした そのときわたしは 傷ついた自分をたたみ立ち上がった 歩けるだけ歩こうと よろよろと光に歩みよる 過去のシグナルはもうそこにない あるのはかわいた日常と これからはじまる人生 入選 無題 小林 浩太朗 母があらいものをしている かすかにはなうたがきこえる じゃぐちから出る水の音 何のリズムかな ぼくの今日のリズムをつくろうかな 無題 大森 雄山 去年の書初め 所は朝日町 書理の銀賞 一人単調 恩師の真影 今ここにあり 拝待して毎日 斜陽を拝す 山河破れた 国在り 地球の温暖化現象かな 入選 時の願い 風姫 人々の心にやっと光が差して来た 私の願いが1つやっと叶えられた ほんの少しだけ淋しい 時が過ぎていた いつも小さな窓から 同じ景色を羨ましい思いで見送っていた 子供達が楽しそうに笑う声に 可愛い恋人が仲良く歩く姿に 私もここから 逃げ出して 一緒の景色を見たかった 独りぼっちの部屋は とても寂しいから ずっと過ごして来たから 悲しさは流れていたけど いつかきっと 私も小さな窓から 広い空を見て過ごしたいね 飛行機を追いかけて 夢を待つ時の手紙 時は流れて 人々の心に影りが差して来た 私の願いが やっと叶ったのに 優しい言葉が消えた 暖かい場所が変わって来た それでも私は嬉しいの 小さな窓の景色が消えて 広い空を仰ぐ やっと捕まえた 私の広い空 私の暖かい場所 ずっと このままでいて欲しい ずっと ここで見守って欲しい 遅すぎた時 私の願い もう1つの夢は いつ 叶うだろうか? ずっと ここで待つ時の手紙 あたりまえ 師走 大安 あたりまえのことは みえないことが多い あたりまえに必要で あたりまえに大切なのに あたりまえすぎて 忘れてしまう あたりまえにある日常も あたりまえにいるあの人も あたりまえでなくなると とても尊いものだと思い知る 幸せの種はあたりまえの中に埋まっている あなたのあたりまえは何ですか