【審査員からの講評】 〜選を終えて〜 個性の輝きを見る  審査員 竹内冬眠 今年は川柳の参加者に比べて、詩が10人と(昨年は15人)、少なかった。「一筆の主張」の主旨からすれば、17文字を表現の核とする川柳が多いのは、極めて当たり前のこと。 ただ、作品としてはどちらもレベルの上で遜色なく、それぞれ個性の輝きが見えて清々しい。そして、そこから先がいずれも楽しみである。 【詩の部】 入選1位 「自分は自分」 吉田沙緒里 >評<  さりげなくでているような言葉の運び、実は作者にとっては、心中の重なる葛藤の末に絞り出されている。これは諦念(ていねん)ではない。堅い生きる覚悟である。 入選2位 「生きていく」 内田美奈子 >評<  差別に、死ぬほどのつらい過去があったが、そこを超えられたのはサポートしてくれる人たちがいたからだ。この熱い感謝と決意が終行の二行に込められている。    入選 自分は自分 吉田 沙緒里(統合失調感情障害) 泣いてあばれるのも 思いを伝えるのがへたでも 自分は自分でいいと思う 字がへたでも みんなとちょっとかわりものでも 周りの人とくらべなくていい だってあなたはあなただし 一生懸命生きているのだから 自分は自分 入選 生きていく 内田 美奈子(人格障害) 振り返ってみれば  泣きたい時 笑いたい時 怒りたい時  いろんな感情 押し殺してた  苦しかった つらかった 死にたい時もあった  今は大丈夫  支えてくれる方達がいる 一人じゃない  回り道 沢山するけど 前を向く  私は生きていく・・・ 命がある限り ピンクの恋 前嶋 亜矢子(統合失調症) となりにて 笑う人に 恋あふれ。 いつも あなたを思い 恋は ピンク色 雨のち晴れ 田中 つぐみ(統合失調症) 雨 降っていると 誰かが 泣いているみたい 悲しみが あるのだろう つらいこと うまくいかない 誰だってある それは 人間だから 雨が すべてを 流してくれるだろう そうやって くり返して ゆくんだ 失敗は 未来への ぬけみち 成長して ゆくんだ 人間なんだから 無題 啓斗(統合失調気分障害 他) 涙をふいて 前をみてごらん 雨はあがり 希望の光が 友の笑顔が 豊かな自然が 霊峰富士が 涙をふいて ゆっくり立ち上がってごらん さぁ僕の手をとって 埃を祓おう 栂江 奈津夫(身体障害) 時が埃のように 私の中に 降り積もってゆく いつか見た青空 いつか見た夢 いつか見た希望 いつか見た未来 かつては輝いていた かつて私はエリートだった いまは埃で曇ってゆく いまは単なる障害者 いつまでたっても障害者 いかん いかん 祓わなくっちゃね 埃は 心意気でね 精神障害者の主張大会をもくぜんにして 中村 美津夫(精神) 今日も学校の通学路  吸い殻 空き缶 ペットボトル タバコのあき箱  犬のふん 猫の尿のにおい すごいじゃんネエー! みっちゃんそう思うやろー! あーあ! 大人になりたくねーし あーあ! 毎日いやだネエ! ねえ ねえ あの人! へんなおっちゃん けったいの町やネー でもあの人 ちがうよ!あの人よっちゃんちのじーじじゃん そうそう いつもごみひろってる人 字がうまくて 暗算とくいの人 ネー あの人も あの人も あの人も いつもグランドゴルフの道具みたいのもって歩いてる人たちだよ この町にもああいう人たちいるんだ 生きていく 内田 美奈子(人格障害) 振り返ってみれば  泣きたい時 笑いたい時 怒りたい時  いろんな感情 押し殺してた  苦しかった つらかった 死にたい時もあった  今は大丈夫  支えてくれる方達がいる 一人じゃない  回り道 沢山するけど 前を向く  私は生きていく・・・ 命がある限り ぼくの心 小林 浩太朗・介助佐藤袈裟江(身体障害) ゆめ きぼう あせり 言いたいのに言えないつらさ でもぼくには たえる というきもちが生まれた 心をかたむけてくれる人がいた そのおかげで大きいゆめがかなった 金いろはおだやかでとげのない丸いきもち ぼくの心は大きく光りかがやいている M子先生への鎮魂の詩 佐藤清子(肢体障害) あれは何十年前の事だったでしょうか 私は先生に茶道を習いました 当時の先生はスラッとした色白の美人でした 袱紗さばき 茶筅のまわし方 茶托の置き方 すべての所作が あの白魚のような美しい手先から伝わりました そして・・・ 再会は思いがけない場所だった お互いに年を重ね それぞれが障害を持ってから利用するデイサービスだった 記憶もうすれかけた先生に声をかけると 「どこかでお見かけした方だ」 と記憶をたぐりよせてくれた 先生のベットの横を通るたびに 声かけをするとうっすら目をあけて 反応を示して思い出ばなしをすると涙さへ浮かべて 感情をあらわしてくれるように・・・ そして時は過ぎ・・・ 亡くなる十日程前 私が呼びかけをすると両目をぱっちりあけて 今まで見たことのない表情を見せ、スタッフも驚き  急いでシャッターを切りすばらしい写真になった あの表情を見せてくれたのは  私達への最後のメッセージだったのかと手許にある写真を見ながら 不思議に思えてなりません 黄泉路に旅立たれた先生に感謝の念とご冥福を祈りて 合掌 がんばる 師走 大安 頑張ってもできなかったら できるようになるまで頑張ってみる または できないから助けて下さい と誰かに力を借りる でもそれはとっても勇気のいる事で 頑張らないとできない 頑張って一人でできるようになれば あなたの自信になり 頑張って誰かに力を借りたら あなたの心に優しさと感謝が増える